不思議な巡り合わせ

 3 月のある日、リンクスの生徒さんが大学受験をするにあたりカウンセリングをしました。Sさんは3 年
間カナダの高校で学び、TOEFL93, TOEIC870 を取るくらい英語力をつけました。W 大学社会科学部で、
2018 年度から新しくスタートするプログラムが志望先です。大学受験のためというよりも大学でどのよう
な勉強をしたいのか、将来の夢につながるための準備段階として取り組もうと話しました。受験はある意味
でその通過地点です。
 宿題は大きく分けて2 つ。まず面接で話すことになるだろう「内容の整理」です。(1)志望動機(2)大
学でどのような勉強がしたいか、卒業後の進路(3)提出したエッセイの内容を整理し、必要なことは追加
調査をしておく。(4)カナダの高校留学で学んだことの4 つです。もう一つの宿題は「デリバリー」です。
帰国して約1 か月間、英語を話していないというので、毎日英文の音読とイギリスBBC4 やカナダの国営ラ
ジオ放送をシャドーイングをしてもらうことにしました。
 準備期間は3 週間。最初の1 週間は整理や追加で調べる時間にあて、2 週目から面接の予行練習をしなが
ら内容調整をしていきます。「高校では友達と話すことが多くてカジュアルな話し方ですが、大学のような
面接でフォーマルというかきちんとした話し方に慣れていないのが不安です。」と打ち明けてくれました。
こんな子がもし不合格になったら、彼女に問題があるのではなく、その大学に見る目がないからだと思いま
した。どこか「突き抜けた」ところのある賢い子です。
翌日仲のいい工学部の先生とお茶をしました。彼は今年度からW 大に移籍します。
「これから理系だけでなく、文系にも関わるのでいっぱい勉強しなきゃ」と笑っています。
「え、工学部じゃないんですか?」「いえ、来年度からスタートするSS(=Social Science)ですよ。社学っ
て呼んでいるんですがね。」(まさに彼女が受験する学部でした!)
「そこでは僕の専門の経営工学もやりますが、主に商学部、政治経済・・・え~と」
「法学部」「そうそう、いくつかの学部が一つになって、学生たちは『社会科学』として勉強します。」
 その時、私の心の中で、コトンと音がしました。私の父が生前語ったことがあります。「これからは1 つ
の分野だけでなく、政治やビジネス、法律など多岐にわたって学問をする時代が来るよ」と。40 年位以上
も前のことです。父はビジネスマンになる前に、まさにそのW 大で研究をしていたのです。
 「お父さんの言っていたことが現実になったよ。」そう心の中で父に語りかけました。そして、何か不思議
な巡り合わせを感じたのでした。

Harumi

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